No.1169 スペースシャトルの野口さん

日本時間で昨夜の23時39分。

スペースシャトルが宇宙に向けて飛び立った瞬間、
僕はその映像を眺めながら、胸を熱くさせていた。

物心がつく頃、子どもはだれでも
「大きくなったら何になりたいの?」と大人に聞かれる。
今思えば、世間の仕事を知らないガキに
質問すること自体が間違っているんだけど、
幼稚園に入る前の頃、僕は大人からそんな質問を受けたら
「すぺーすしゃとるの、のりくみいん!」と答えていた。

母親が買ってくれたスペースシャトルの本を見て、
思いっきり感化されてしまった僕は、
「いつか宇宙に行くんだ」と真剣に思っていたのだ。

大きくなるにつれ、いつのまにかその夢はなくなった。
たぶん、現実的なことと、そうでないことが分かってきたからだろう。

小学校の先生が卒業式で
「オマエらが大人になる時は、月に旅行できるようになってるぞ」と
言ってたけど、そろそろ大人になった今、
一般人の月旅行はほとんど不可能だし、NASAは超エリートばかり。
現実は甘くない。

でも、心のどこかでは、
やっぱり今でも宇宙に行ってみたいと思ってしまう。
(三つ子の魂、百までってやつ?)
あきらめたからダメだったんだな。

その昔、おはなしでも紹介したけれど、
僕に「夢とは何かを教えてくれた人」は、こう言ってた。
「簡単に実現できないから夢なんだ。
 困難でも、あきらめなかったからこそロケットは月に飛んだんだ」と。

今回のスペースシャトルに、
あきらめなかった日本人が1人、乗っている。
野口さん。どこにでもいそうな普通の名前じゃないか。

彼も生まれた時は、普通の人だったんだ。
でも、あきらめなかった。
だからこそ、今、宇宙の神秘を目の当たりにできている。

スペースシャトルが空の彼方に消えていく映像を眺めながら、
僕は野口さんに拍手を送った。
「あなたはえらい!見習います!」と。

「夢はあるのに、現実に負けてしまう」と人は言う。
でも、現実とは形があってないような言葉。
意味が変えられる言葉なんだね。

今、あなたの頭にはどんな夢が浮かんだんだろう。
それを日常のしがらみと相談して「無理」と決めるか、
自分の気持ちと相談して「できる」と思うかが、運命の分かれ道。

生活のすべてだと思っていた地球を
見下ろしている野口さんの気持ちは、どんな感じかな。
地球に住む60億以上の人々に対して、
彼に「小さくまとまるなよ」と励ましてほしい。