No.1530 アンパンマンを見守る食パンマン
息子のことで、最近少し悩んでいることがある。
数カ月前、「アンパンマンの人形」を買ってあげた。
それからというもの、息子は彼は毎日のように
アンパンマンと遊んでくれている。
それはそれで父としてうれしいんだけど、
遊び方が問題でね。
人形は“起きあがりこぶし”のようなやつなんだけど、
何度倒しても起きあがってくるのが面白いのか、
息子は愛らしい笑顔のアンパンマンに
ひたすらジャブやフックパンチを打ちまくるのだ。
ボコボコにされていくアンパンマン。
その光景を見ていたら、なんだか
少しアンパンマンがかわいそうになってきて…。
時々、息子が意地悪なバイキンマンのように見えてしまう。
いや、一度は両者の間に入ろうと思ったりもしたよ。
でも、ボクは「食パンマン」似。
息子から見れば父親がアンパンマンの味方をしているように見えるので、
今後の親子関係を考えてもそれはできない。
うーん、難しい。
最近は息子もパンチに飽きたのか人形を持ち上げて遊ぶようになり、
マントも剥ぎ取ってしまって、今じゃただの「アンパン」になってしまった。
バックドロップされて後頭部を打ったり、
顔面から畳に叩きつけられたりしても、顔色ひとつ変えず、
常に笑顔で起きあがってくるアンパンマン。
いやいや、まったく頭が下がる。
噂には聞いていたけど、アンタ、本当のヒーローだよ。
我が息子には、アンパンマンのこの精神を見習ってほしいなぁ。
どうすることもできず、
とりあえず食パンマンおじさんは、今日も黙って柱の陰から
アンパンマンが殴られるのを見守っている。