No.2035 田舎者のブルース
『田舎者のブルース』
東京city。
なんなんだ、この街は。
地上にも人があふれているが、
地下にはもっと人がいる。
所狭しと立ち並ぶ高層ビル。
頭上だけじゃ飽きたらず、
まだ足下にもスペースを求めるのかい。
どこもかしこも工事中の看板を掲げ、
いつもなにやら穴を掘っている。
今度はなんだい?
また新しい電車の路線かい?
もういいだろう。
都営やらメトロやら新線やら、
覚えきれないや。
地下ができれば必然的に地上への出口は増えるけど、
その数があまりに多すぎて
今どこにいるのか、自分を見失いそうになるよ。
田舎者にとっては
Suicaのペンギンさえ怖いんだぜベイビー。
街が怖いわけじゃない。
あまりに作られた世界なのにもかかわらず、
多くの人がそれに順応して
当たり前に暮らしていることが怖いのだ。
ICカードを片手に何食わぬ顔で
路線を乗り継いで行くそこの坊や、
君はかなりすごいことをしているんだよ。
そこでつまんなさそうな顔で吊革を持っている姉ちゃん、
いくらでもモノがある中で
これ以上何が足りないって言うんだい?
この街では当たり前の基準が違う。
新陳代謝が活発だから、
底知れない欲求とともに
その基準はどんどん高まっていく。
一度上がってしまった基準は、
なかなか下げられない。
電気や電波がなくたって、
人間は生きていけるのに。
大阪に住む僕も
昔より基準が上がってしまったかもしれないけど、
もうここらでストップだね。
コンビニエンスな社会は、
やっぱり僕には無理そうだ。
Darling、君と一緒に
田舎者でいこう。