No.263 ファンタオレンジ
暑い暑い夏の日。
「行こうぜ!」
かけ声と同時に、
僕らの野球はひと休み。
プラスチックのバットもゴムのボールもそのままに、
みんなで川のそばにある自動販売機へと走る。
誰よりも速く 誰よりも一生懸命に
50円玉2枚をしっかりと握りしめながら。
「ハァ…、ハァ…、到着~」
一番はやく自動販売機の前に着いたヤツから
ゆ~っくりと50円玉を2枚入れる。
ウィーン、ガチャーン。
膝のあたりから汗をかいた
ファンタオレンジが飛び出してくる。
帰り道は 忍び足。
走って揺れたら炭酸がブォーって飛び出すから
缶のふたもあけないまま
そーっと そーっと
いつもの日陰まで もう少し。
全員が日陰に到着したら、
みんな「せーのっ」でプシュ-!
シュワシュワ~。
も~うガマンできない。行くぞ!
ゴク、ゴク、ゴク。
ぷは~!
「うめぇ~!」
そして僕らはまた野球を始めた。
夕陽が沈んでボールが見えなくなるまで、ずっと。