No.511 おじぃとおばぁの小さな薬局
かぜで土日はバタンキュー。
昼間に少しだけ起きて、薬を買いに家を出た。
雨。
頭もふらふらだったので、家から一番近い
神社の前の、古い薬局に入る。
2~3畳ほどの狭いスペース。薄暗い灯。
中におじぃとおばぁが2人。
婆「あ~、いらっしゃい。
おじいさん、お客さんやでー!」
まるで100年ぶりに客が来たかのように、
盛り上がる店内。
爺「おうおう、これはこれはお兄ちゃん。
どうしなさったん?」
決して薬剤師免許を持っているようには見えない、
おじぃが話しかけてくる。
僕「イヤ、ちょっと熱が出て…」
爺「そりゃいかーん、
婆さん、“アレ”あったやろ、アレ。」
婆「はいはい。」
なんだ、この
4-4-2のフォーメーションのような
計算された動きは。
婆「じいさん、これでしょ?」
爺「そうそう、それやがな。」
レジの上には、
見たこともない愛知のメーカーの薬と、
どうみても人気のなさそうな冷シップ。
爺「カゼの時は、首の周りを冷やさなアカンのよ。」
おじぃはそう言って、シップを折りたたんで、
ハサミで半円を切り取り、ちょうどシップが
首のカタチにマッチするように仕上げてくれた。
婆「そうそう、それが良く効くんよね。
はい、2750円。」
何も言えないまま、
謎の薬とシップを買わされて、家に戻った僕。
言われた通り、シップを首に貼って、
謎の薬を飲んで、目を閉じた。
…これで治らなかったら、
おじぃとおばぁに文句言ってやる…
そう思いつつも、
一人で寝こんでいるじゃない気がして、
病床で、どこか少し心強かった。