No.3961 プロの朝飯前感
建築現場とかにあるプレハブの建物、
あれ、昔から好きなんだよね。
僕たち一般人から見たら、
建築現場の人があっという間に
仮住まいを建ててしまうことにいつも驚かされる。
でも、当の本人たちは
「え? こんなんオモチャみたいなもんやで。建物のうちに入らへんで」
みたいな涼しい顔でいるんだよね。
うまく言えないけど、
“プロの朝飯前感”って言うのかな?
その道の人が本気を出す前のデモンストレーションが、
素人心をワクワクさせてくれる。
「これからもっとすごいことが起きるのか~」って。
サッカー選手が試合前の練習で見せるリフティングとか、
デザイナーが描くラフスケッチとか、
少し違うけど料理店のお通し(突き出し)なんかもそうだよね。
結構レベルの高いことを
余裕を残しながら簡単にやってしまうあの感じ、
プロっぽくて好きなんだよな~。
20代前半、5分以内で
「おはなし」を書くというルールを自分に課していた僕は、
どこかそんなプロっぽさに憧れていたのかな。
朝飯前でやり遂げて、もっと高いところに行きたかったのかな。
何も浮かばない日もあった。
疲れ果てて、書くのが難しい時期もあった。
晴れの日、雨の日、嵐の日、
いつも朝飯前ではなかったけれど、
なんとか3900回ほど続けてきたよ。
おかげで今じゃ、
この程度の長さの話を書くことなんて
一つも苦にならない。
そうか、
朝飯前のように見えていた建築現場のプレハブも
誰にでも建てられるわけじゃないんだな。
今はそれがよくわかる。
やりきった者、
窮めた者だけが手にすることができる
人間としての奥行き。
僕が憧れていた朝飯前の正体って
きっとそれなんだと思う。