No.4655 見えない言葉の美しさ

「前向きになろう」と
無理をしている時点で後ろ向き。

「後ろ向きでもいいか」と
割り切れる時点で前向きだ。

額面どおり言葉を受け取るのは
子どもがやることで、
言葉の真意を汲み取るのが大人。

大丈夫じゃない人ほど「大丈夫」とか言うし、
酔っている人ほど「酔っていない」と言う。

何が正しいかを判断するのは
語彙や文法じゃなく、空気感?
「空気を読む」とは本当によく言ったものだなぁ。

話し言葉なら抑揚で空気感を操れるものの、
文字だけでそれを伝えるのはなかなか難しい。

それこそ、「行間を読ませる」という
高度な文筆テクニックが必要になるし。

10ある情報のうち
文字ではあえて7程度にとどめておいて、
残りの3以上をあえて読み手に想像させる。

小説家とかはこれが本当に上手だよね。
事例としていつも真っ先に思いつくのは、
夏目漱石の「月がきれいですね」という言葉だ。

月夜の情報は7にとどめ、
あとは月を見上げて女を想う男の姿を想像させることで、
10以上の“I love you”として相手に伝わる。

いやぁ、いい国だね。
繊細で難しいけれど、
日本のコミュニケーションには
細い綿糸のような美しさがある。

年賀状で言葉をもらって、
改めてそう思った。