No.836 コンビニ弁当会議

■コンビニ弁当会議■
 
 
ウインナー
「今日みんなに集まってもらったのは他でもない。
 今度新しい弁当を結成することになった」
 
 
たまご焼き
「まじで?」
 
 
ミートボール
「えー、『肉素材スペシャル弁当』は解散なの?人気あったのに」
 
 
白飯
「まぁ、俺はどのユニットでもOKやけどな」
 
 
漬け物
「…」
 
 
ウインナー
「まぁみんな落ち着け。まだどんな弁当かは決まってない。
 そこでだ、みんなに新ユニットの案を出してほしいんだ」
 
 
たまご焼き
「そやなー、そろそろ新戦力が必要とちゃうか?
 キャビアはんとか、フォアグラはんとか」
 
 
ミートボール
「そんなのダメだよ。仲良くやっていけそうにないし。
 第一、あの人たちのギャラは僕らの100倍ぐらいするんだよ」
 
 
白飯
「ええんちゃう、俺はメンバーから外れることないし」
 
 
漬け物
「…」
 
 
ウインナー
「たまご焼きの意見も一理あるよな。
 そろそろ俺らの護送船団方式も通用せんよーになってるからな。
 新しい力を迎えなアカン時期がきたんかもしれんな」
 
 
たまご焼き
「そうやで。でも、弁当のスペースは限られてるから、
 新しい戦力が来たら…誰かが辞めなアカンってこと?」
 
 
ミートボール
「そんなのイヤだよー、絶対にイヤ。
 僕はずっと弁当界のアイドルでいたいんだ」
 
 
白飯
「わがまま言うなミート、所詮お前らは俺とは違って、
 代わりのきく“おかず”なんだよ」
 
 
ミートボール
「イヤだ、イヤだ、イヤだー!」
 
 
漬け物
「…待って。僕が辞めるよ…」
 
 
ウインナー
「つ、漬け物…。おまえ…」
 
 
漬け物
「いいんだ。前から感じてはいたんだ。
 どうせ僕は脇役中の脇役だ、って…。
 電子レンジの中でみんなで温められる時も、
 『僕を温める意味はあるのかな』なんて疎外感を感じてたし…」
 
 
たまご焼き
「そっか、じゃあ漬け物が引退な。
 これで決まったやん。」
 
 
ウインナー
「待て! なぁ漬け物、今辞めるってことは、
 これからずっと、ジジイやババアの口の中にしか
 入れないってことだぞ。それでもいいのか?」
 
 
漬け物
「…」
 
 
白飯
「ウインナー監督のいうとおりや。
 たしかにお前は存在感は薄い。っちゅーか無い。
 でもな、お前のような深い味わいを出せるヤツは他にはおらん。
 俺も味の薄い穀物系として、相方のお前に抜けられるのはキツイわ」
 
 
ミートボール
「そうだよ。漬け物くんが辞めることないよ」
 
 
漬け物
「み、みんな…」
 
 
ウインナー
「漬け物よ、お前ってヤツは本当に幸せもんだな。
 弁当に大切なのはな、やっぱりチームワークだ。
 全員が4番バッターでなくてもいい。
 8番で送りバンドを決めるやつがいるからこそ、
 チームは存続できるもんなんだよ」
 
 
たまご焼き
「…、漬け物、さっきはスマン。
 俺もそう思うわ。一緒にやろうやないか」
 
 
漬け物
「ありがとう、ありがとうみんな。
 僕、もう一度やってみるよ!」
 
 
 
かくして、今日もコンビニでは、
あいも変わらず同じような弁当が並んでいるのであった。
めでたし、めでたし。