No.929 ハッスル

深夜2時に家に帰り、遅い晩飯を食いながら
PRIDEグランプリ2004のビデオを見ていた。
 
すると、元柔道選手の小川直也が勝利したあと、
観客をあおってこんなパフォーマンスをしていたのだ。
 
 
 「さぁ皆さん、いいですかー?
  1ー、2ー、3ー、
  ハッスル、ハッスルー♪」
 
 
衝撃だった。
アントニオ猪木の「1、2、3、ダー!」は知っていたが、
いつのまにかこんなのが流行っていたんだ。
埼玉アリーナの観客が、かけ声に合わせるように
曲げた両腕を前後させているのを見て、
カルチャーショックに襲われた。
 
「ハッスル」とは、小川直也が旗上げした
プロレス団体のことなんだけど、
初めてその名を聞いた時は「ぷっ」と
吹き出してしまった。
 
大会前のインタビューで小川が
「僕はね、ハッスルを広めるために出場するんですよ。
 ハッスルが最高なんですよ。ハッスルに命かけてるんですよ。
 ハッスルです、ハッスル…」と真剣に熱く語っているのを見た時は、
ある意味おっさん言葉である「ハッスル」というワードを
何度も繰り返していることに腹を抱えて笑った。
 
しかし、少なくともPRIDEの会場では、
ハッスルという言葉が大観衆の中で認知された。
これを衝撃と言わずして何と言おうか。
 
たぶん、「ハッスル」という名前が何であったとしても、
小川の勝利によってその言葉が広まっていただろう。
ためしに、団体の名前が「にゃんにゃん」だったことを想像してみると…、
 
 
「僕はね、にゃんにゃんを広めるために出場するんですよ。
 にゃんにゃんが最高なんですよ。にゃんにゃんに命かけてるんですよ。
 にゃんにゃんです、にゃんにゃん…」
 
 
今は絶対に笑ってしまう。
でも、それを吹き飛ばすことを成し遂げれば、
人の認知など一瞬で変わるんだ。
 
子どもの名前を決める時、
あえて適当に決めるべきと語る人がいる。
親が名前の意味を決めるのではなく、
子どもが自分でその名前を認知させ、
人々がその意味を決めていくものだと。
 
この意見には前から大賛成だったが、
その想いは小川の一件でさらに強くなった。
 
名前とはブランドである。
しかし、ブランドである限り、
イメージなんていくらでも変えられるのだ。
僕の名前も、あなたの名前も。