No.2728 ったく、今どきの若いヤツは…エライ!


 
 「ったく、今どきの若いヤツは」



と思うこともあるけれど、
たぶん、僕も年配者から見たら
そう言われていたはずだ。
いや、今でも言われているのかもしれない。

今の僕から見れば、
10代、20代の人たちはやっぱり若者で、
どうしても足りない部分が目についてしまう。

でも、何かが足りない代わりに、
僕たちがなくしかけた何かを持っていたりもする。


昨日の夜。

終電近くの電車で帰っている時、
フラフラしながら歩いている
20歳前後の若い男子2人が電車に乗ってきた。


 「おいおい、大丈夫か?」



   「アカン…、しんどい…」



おそらく酒を飲み過ぎたのだろう。

片方の背の大きな男の子は
大丈夫そうだったけど、
背の低い方の男の子は
顔面が真っ白になって
吊革を持って立つのもしんどそうだった。



   「…あと何駅、ぐらい…?」



 「まだまだやな。
  あそこ席空いてるから、とりあえず座れって」



背の大きな男の子が指さしたその席は、
僕の隣の席だった。

座った後も、
ぐったりとうなだれながら
吐き気と闘い続ける、背の小さな男の子。

背の大きい彼は、吊革につかまりながら
「もうちょっとや。がんばれよ〜」と何度も応援していた。



   「…すっ…、すまんな…逆方向やのに…」



 「ハハハ! 気にすんなや。
  それよりも、絶対に吐くなよ。
  周りの人の迷惑になるからな」



どうやら、背の大きな男の子は
小さな彼を介抱するために
わざわざ自宅とは逆方向の電車に乗ったようだった。

隣でそのやりとりに聞き耳を立てながら、
「コイツ、エエ奴やな」と思った。


その後、なんとなく
傍観していることもできなかったので、


  「兄ちゃん、隣で介抱したり」


と言って席を譲ったら、
背の大きな彼は丁寧にお辞儀をして
小さな彼の隣に座った。

そこから2駅ぐらいの間、
僕は彼らの前に立って様子を見ていたんだけど、
ふと周りを見渡すと
ちょっとした異変を感じた。

僕たちの席の近くから、
スーツを着た大人たちが
さーっと遠ざかっていたのだ。

きっと、
背の小さな彼が吐いてしまった時に、
被害を受けるのを避けるためだろう。
「大人は賢いな…」と思った。


そうこうしているうちに
自宅近くの駅が近づいてきて、
僕は2人を残して電車を下りた。

気になって振り返ると、
ぐったりとした背の小さな彼の肩を抱きながら、
ずっと励まし続ける背の大きな彼の姿が見えた。

あの後、彼らはちゃんと帰れただろうか?
気になるけれど、その後のことはまったく知らない。
ただ、二人の友情は
きっと深まっただろうと思う。


大人がなくしかけているものって、
何だろうね。