No.3047 娘の髪を撫でながら


風呂に入り、娘の髪を洗う。

シャンプーをして、リンスもして、
つやつやになるように洗ってやる。

その間、
娘はずっと好きな歌を歌っている。
同じフレーズを、何度も気持ちよさそうに。



風呂から上がり、娘の髪を乾かす。

長い髪をくしゃくしゃしながら、
ドライヤーで念入りに乾かしてやる。

その間、娘はずっと好きな本を読んでいる。
声には出さず、じっと何かに集中して。



ぶーんと熱風で乾かしている最中、
僕の意識は少し遠くに行っている。

「いつのまにか頭が大きくなったな」

とか、

「こんなことをさせてもらえるのも、
 小学校ぐらいまでかな」

とか。


何かをかみしめるように、
何度も何度も手櫛でといてやる。

シャンプーが同じだから当たり前だけど、
娘の髪は、嫁と同じ香りがして。

髪をとくたび、
だんだん、だんだんと
嫁に似ていくような気がする。



布団に入り、娘を寝かす。

やさしく髪を撫でながら、
寝かしつけてやる。

その間、娘は静かに
もう片方の僕の手を握っている。
小さなまぶたを閉じながら。

その手を握り締めたまま、
いつのまにか僕も眠っている。

父の片思いは、一生続くんだな。きっと。