No.5344 日本流 無言のサービス

駅の長い階段を降りようとしたら、
最初の段だけ段が浅かった。
 
すごいよな、日本人。
 
階段に気づかない人が踏み間違えても
一気に転落しないように、
あらかじめ浅くしてあるなんて。
 
日本は小国かもしれないけれど、
だからこそ視点が細やかというか、
外国では考えられない「無言のサービス」が
あちらこちらに散りばめられている。
 
決してドヤ顔で主張しない慎ましさが、
この国の品格なんだろうな。
 
 
高校野球の春のセンバツ、
今年もいろんなドラマがあったけど、
そんな表舞台の陰でも
昔から続く無言のサービスが行われていた。
 
高校野球というのは、
終盤になってワンサイドゲームになると、
たいてい負けているチームの代打攻勢が始まる。
 
もう逆転は無理だとわかっていても、
いつも試合に出られない控えの選手に
甲子園の思い出を経験させてやりたい。
監督さんたちの思いやりだ。
 
これはこれで美しいんだけど、
本当に美しい光景は別にある。
 
 
代打の選手がバッターボックスに向かうと、
なぜか必ず審判が一旦試合を止め、
ホームベース付近の土をはらう掃除を始める。
 
ホームベースは、
ストライクとアウトを見極めるためには
大切なものだから、試合中、
イニングチェンジのタイミングとかで
毎回掃除はする。
 
でも、イニング進行中に
プレーを止めてまで
掃除をすることは稀なんだよね。
 
 
じゃあ、なぜ審判は
代打の選手がバッターボックスに入るたびに
わざわざ掃除を始めるのか。
 
その理由を簡単に言えば
「時間稼ぎ」だ。
 
甲子園には、全国各地から
たくさんの球児が集まる。
 
その保護者や親戚の中には
現地まで応援に行ける人もいれば、
応援に行けずテレビで見守る人もいる。
 
甲子園の審判は、
普段あまり出られない球児が
少しでも長くテレビに映ることができるように、
わざと掃除をするのだ。
 
何も言わず、無言でね。
 
この配慮は、伝統的に昔の審判から
今に受け継がれてきたものらしい。
 
 
こんな国、他にあるかい?
エモすぎるぜ、日本。
 
いいことも悪いことも起きるし、
いい奴も悪い奴もいるけれど、
いい国だと思うな。
 
それを体現できる大人でありたい。