No.1973 酔っぱらいのオッサンとカステラ焼き屋の兄ちゃん
昨日の夜、いつも通っている駅の近くで
人を待っていた時のこと。
酔っぱらって立てなくなったのか、
水を片手に、ビールケースの上に座り込んでいるオッサンがいた。
しばらくして立ち上がり、
フラフラと歩き始めるオッサン。
その様子を見て「やれやれ」という表情で、
露店でカステラを焼いていた若い兄ちゃんが
ビールケースを直しにやってきた。
「おっちゃん、もう大丈夫かいな?」
「だぁ、だいじぉょぶやぁ〜」
「ビールケース、もうしまうよ」
どうやらそのビールケースは、
兄ちゃんがオッサンに貸してあげたものらしかった。
カステラの鉄板を掃除しながら、
店じまいを始める兄ちゃん。
しばらく、オッサンはその様子を眺めて、
露店の前を離れようとしなかった。
「どうしたん? おっちゃん、まだしんどいの?」
「いや、だい、じょぶ、です〜。
ありっ、がとっ、ございますぅ〜」
「エエよ。はよ家帰り。
ほんま、気をつけんとアカンで。
ケガとかしたら大変やからな」
飲み過ぎて何も言えなかったのか、
言葉に詰まったのかはわからなかったけど、
その後、少し間があった。
そして、オッサンはゆっくりと
兄ちゃんに向かってこう話しかけた。
「アンタ、、やさしいのぉ〜」
酔っぱらいの意外な言葉に、
少し驚きを見せる兄ちゃん。
「ちょ、ちょっとやめてや〜(笑)。
そんなんエエって。はよ帰り」
「やっ、、やさしいのぉ〜」
ふと見ると、オッサンの目には
涙が浮かんでいた。
「ありがとう、ございますぅ〜」
「はいよ〜、おやすみ〜」
深々と頭を下げ、
フラフラしながら歩き始めるオッサン。
照れ笑いをしながら、
店の片付けを続ける兄ちゃん。
決して派手ではないけれど、
夜の駅前でくり広げられた
感動の名シーンだった。