No.2370 沖縄のシーグラス

19歳、初めて沖縄に行った時、
朝起きて砂浜を散歩していたら
まるで“おはじき”のようなきれいな石が落ちていた。

それは、とても触り心地が良く、
キラキラと光っていて。

波打ち際を探したら、同じようにきれいな石や
白いサンゴがたくさん落ちていたので、
「沖縄に来て良かったなぁ」とか思いながら
土産がわりに持ち帰った。

そのキラキラした石が、自然のものではなく
ガラスの破片(シーグラス)であるということは、
本土に帰ってから初めて知った。
白いサンゴが、環境汚染に負けた死骸であることも。

それを知った瞬間、
なんとも言えず複雑な気分になったことを
今もまだ覚えている。

目の前にあるモノはとても美しいんだけど、
それを「美しい」と言ってはダメなような、
観光客が何も知らずに浮かれているような。

ずっとそんな思いを抱いたまま
次に沖縄へ行った時、思いきって現地の人に聞いてみた。

 「シーグラスとか、白サンゴって…」

   「あぁ、見ました? きれいでしょー!」

 「え、ええ…。でも、アレって…」

   「シーグラスは沖縄の名物よ。
    元々は米軍のコーラ瓶が多いんだけど。
    白サンゴも、死んじゃってもきれいでしょ」

その人だけでなく、
他の現地の人に聞いても同じ答えが返ってきた。

元はどうであれ「きれいなものはきれい」というのが
現地の人々の見解だった。

それを聞いた瞬間、心が軽くなってね。
きれいなものを素直にきれいと言える、
そんな美しい心を持ち続けたいなぁと思った。

当時砂浜で拾ったシーグラスと白サンゴは、
「せめて水際に置いてあげよう」ということで
我が家のトイレ周辺を飾っている。

子供たちは「なにこれ?」という目で見ているけど、
彼らに説明するのは時間がかかりそうだから、
早く現地の海に連れていきたい。