No.4428 智恵子抄

智恵子よ、
東京には空がないのかい?

大阪にはあるよ。
コインパーキングやシティホテルの電飾看板に、
大きく「空」と。
まぁ、「満」の時もあるけどね。

それを見るたび、思うんだ。

君がもしもSkyじゃなくEmptyの意味で
「空がない」と言っていたのだとしても、
どこか窮屈さを感じて生きていたんだろうなって。
光太郎に「きっとSkyのことだ」と
詩的に勘違いされて、
ちょっぴり寂しかっただろうなって。

もしも同じ時代に生きていたなら、
僕は君に何かできただろうか?
狭苦しさや息苦しさから逃れるため、
スペースを探し求める君のために。

余っている土地でもあれば別だけど、
空いているのは休日の予定ぐらい。
僕だって見えない窮屈さに囲まれている。
抜け出したいよね。このしがらみから。

智恵子よ、
東京には本当に空がないのかい?
心の空きはないのかい?

だとしても、探したいね。
「一人じゃ無理でも、二人ならできるんじゃない?」
僕ならきっと、そう言うと思う。