No.4812 幸福感

「この世で一番美しい景色は?」と聞かれたら
迷うけれど、
「この世で一番幸せな香りは?」と聞かれたら、
きっと答えは簡単だ。
 
焼きたてのパンの香り。
あれに勝るものはない。
 
パン屋さんに入った瞬間に
フワッと包み込むように漂うあの香りは
一瞬にして心の角を丸くして、
日常の嫌なことなんてすべて忘れさせてくれる。
 
疲れた時に漂ってくると、
まるで天国のような錯覚を覚える。
 
実際の香り成分を調べたら
たいしたことがないのかもしれないけど、
世の中は事実よりも感覚だ。
 
少なくとも、僕の感覚は
パンの香りに幸福と高揚を覚える。
 
 
昨日の夜、
たまたまNHKプレミアムで
「疲労の正体」についての特集をやっていた。
 
目からウロコだったのは、
疲労と疲労感は違うこと。
 
疲労は身体的な負荷によって
細胞や遺伝子が傷ついた状態。
 
疲労感はその信号を感じて
脳がアラートを出したものだ。
 
つまり、疲労がたまっていても、
何かでごまかして信号をマスキングすれば、
「疲れていない」と感じる。
 
動物の中でこのマスキングができるのは
人間だけで、中でも日本人が得意らしい。
 
栄養ドリンクは疲労感をマスキングするだけで
疲労そのものは解消しないから、
疲労に気づかず過労死になる人も多いとか。
 
なるほどな。
若い頃リゲインを飲みまくってたけど、
どおりで疲れが取れなかったわけだ。
 
事実と感覚はイコールじゃない。
感覚は自分で騙すこともできる。
 
ただ、僕らは事実より感覚で生きている。
騙されたとわかっていても、
その感覚に身を任せてもいいよな。
 
パンは幸福じゃないかもしれないけど、
パンの香りは幸福感をもたらす。
 
そんな事実と違う感覚を、
色々見つけては楽しんでいく。
 
達成してなくても、達成感。
充実してなくても、充実感。
解放されてなくても、解放感。
 
大人の生き方って、そういうことだろ。