No.3204 金の斧と銀の斧

朝、
いつも乗り換える駅の切符売り場に
おじいさんが立っていた。

どこかに行くために切符を買っていたのだろう。
財布を開いて、券売機のボタンをポチッ。
その瞬間、おじいさんは財布を床に落としてしまった。

すぐに財布を拾おうと
おじいさんがしゃがんだ途端、
今度は胸ポケットに入れていたタバコが落ちてね。

「ありゃりゃ」と遠目に見ていたんだけど、
そのおじいさん、
財布より先にタバコを拾ったんだよね。

僕ならたぶん、先に財布を拾う。
タバコなんて失くしてもまた買えるから。
でも、おじいさんの中では逆だったんだろうね。

これは面白いなぁと思った。
人間の価値観や優先順位って、本当に様々なんだなぁって。

「金の斧と銀の斧」という童話がある。

「銀の斧を落とした」と答えた男は得をして、
「金の斧を落とした」と答えた男は損をする、という話だけど、
今思えば、「銀より金の方が価値が高い」という
作者の価値観が入ってるよね。

もしも今朝のおじいさんが主人公だったら、
どんな童話になるんだろうか?

 「もしもし、そなたが落としたのは金の斧ですか?
  それとも、タバコが2本入った箱ですか?」

   「タバコや。はよ返してくれ」

 「そなたは正直者ですね。ご褒美にこの金の斧を、」

   「いや、だから斧とちゃうって。
    はよタバコ返してくれや」

 「…。」

人はそれぞれ、価値観もそれぞれ。
金メダルじゃなく、本気で
銅メダルをめざしている人がいたら面白いね。

ちなみに、おじいさんを見た後の駅のホームで
女子高生が電話をしながら
「誕生日、指輪なんていらんから、吉野家おごってや!」
と言ってて、ワロタ。