No.542  親の気持ち 子のせつなさ

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(冬休みシリ-ズ第3弾)

実家に帰ると、せつなくなる瞬間が3回ある。
今年の冬もそうだった。

年明け3日の夕方に大阪を出た僕は、
高校時代の友人との飲み会に間に合わせるために、
車で居酒屋へそのまま直行した。

いっぱい遊んで、いっぱい笑って、
懐かしい話や最近の話なんかをしているうちに、
気がつけば深夜1:00。

友達を送ってから実家に帰ると、
ドアの前の電気がつけられていた。

懐かしいカギを取りだして、
まるで泥棒のようにこっそりと家に入る。
台所のある部屋の電気をつけたら、
デ-ブルに“おむすび”が2つ置いてあった…。

息子が居酒屋でバカ騒ぎしている間に、
オカンはせっせとおむすびを作っていたのだ…。
“1つ目のせつなさ”が胸にじわ~っとこみあげてきた。

テ-ブルに置いてあった夜食を残さずたいらげ、
2階の寝室へと階段を上る。
左に行けば両親の部屋、
右に行けば…、旧姉の部屋と旧僕の部屋。

ちょうど姉が結婚して家を出てからだろうか、
両親は左と右、別々の部屋で眠るようになっていた。
別に仲が悪いというワケでもなく、単に両親の部屋が
2人で眠るにはあまりに狭い部屋だったから。

右側の部屋で1人で眠る母親の寝顔を横目に、さらに奥の部屋へ。
…。分かってはいるけれど、やっぱり両親が別々に眠っていると、
なんとも言えない気分になってしまう自分。
“2つ目のせつなさ”が胸を突く。

色んなことを考えて、色んなことを思いだしながら、
部屋の灯を消し、布団の中に入る。

冷たい毛布の奥に、温もりが…。
足で触ると、その温もりがぶわ~っと広がった。
寝る時用の「こたつ」だ。
あらかじめ、親が電源をつけてあたためてくれていたのだろう。

懐かしい天井の模様を見つめながら、
僕は“3つ目のせつなさ”をかみしめていた。

親の気持ち、子知らず。
子のせつなさもまた、親は知らず。

夜がふけていった。