No.2415 新幹線への恩返し
今でこそ、まるでマニアのように
よく新幹線に乗る僕だけど、
当然、昔は乗り方すら知らなかった。
初めて一人で乗ったのは、たしか高3の頃。
大学受験のために
京都まで新幹線で行くことになったんだけど、
なにせそれまで新幹線なんて縁のない乗り物だったので、
どうやって乗ればいいのか、仕組みもわからない。
とりあえず、西明石駅の自動販売機で切符を買って
「自由席」とやらになんとか乗車。
「新幹線って、けっこー安いんだな」
と思いながら、
快適に京都までの小旅行を楽しんでいた。
そこまでは良かったんだけどね。
京都駅で降りようとしたら、改札で駅員に止められた。
「すみません、“特急券”持ってます?」
「は?」
今思えば当たり前のことなんだけど、当時は
新幹線に乗るのに「乗車券」と「特急券」がいるのなんて
まったく知らなかった。
(どうりで切符代が安かったはずだ…)
「え? 特急券? これ、切符じゃないんですか?」
と、聞かれた質問の意味がわからなくて、あたふたする僕。
試験会場までの時間もギリギリだったので
時計を見ながら焦っていたら、
駅員の後ろから偉いさん(駅長?)らしき人が出てきてね。
駅員から状況を聞いた後、こう言った。
「いいですよ、本当はダメなんですけどね、
そのまま行ってください」
「え? いいんですか?」
「試験、がんばってください」
その後、試験会場には時間どおり間に合い、
結果、その大学の試験にも無事合格した。
結局は大阪の大学を選んだので
京都の大学には行かなかったんだけど、
あの偉いさんには本当に今でも感謝している。
その後、「いつか大人になったら、恩返ししなきゃなぁ」と
ずっと思っていたこともあり、
今はなるべく出張時に飛行機を選ばず、
新幹線の売り上げアップに貢献することにしている。