No.3167 リニアのスピード
JRのリニア実験走行で、
ついにスピードが時速600kmを超えたらしい。
実際に体感したことがないので
表現しようがないけれど、たぶん、
まばたきをしている間に風景が変わるぐらい
速いんだろうな。
きっと、運行が始まったら
多くの人にとって便利になるに違いない。
早く会いたい人が、もっと早く会えたり。
早く帰りたい人が、もっと早く帰れたり。
スピードは時間の感覚を変え、暮らしを変える。
そうした発展がうれしいようで、
どこか寂しく感じる自分もいる。
「みんなゆっくり生きたいくせに、
またスピードを上げちゃうの?」と。
もちろん、スローライフが好きなら
リニアに乗らなければいいんだけど、
乗る乗らないに関わらず、否応なしに
暮らしのどこかでスピードを速めることを
強いられるようになると思う。
今の時代、
例えば友人との集合場所まで
電車なら1時間で行けるところを
「歩いて行くから半日かかる」と言ったら、
間違いなくブーイングを浴びる。
それと同じで、これからの時代、
リニアなら1時間で行けるところを
「景色を楽しみたいから電車で半日かけて行く」
と言ったら、非難を浴びるようになると思う。
大阪~名古屋間は、新幹線なら1時間弱。
そこをあえて
「2時間あるからちょうどいい」と誘ってくれる
近鉄特急のコピーが好きだ。
時速600km以上の移動手段には拍手を送りながらも、
急かされず、背中を押されることなく、
「ゆっくり」も認めてもらえる世の中であってほしい。
そうして人々の選択の幅が広がることこそ、
本当の意味での「文明」だと思う。