No.475 180kmの人生 80kmの人生
金曜の夜、
「たまには、人生について
親父と語らうのもいいかな」と思って、
実家に帰ることにした。
色んなことを頭に浮かべながら、
高速をひた走る車の中。
ぼーっとしながら右側の追い越し車線を走っていると、
ルームミラーに、迫り来る派手なスポーツカーが映った。
こんな時、どうするんだろうな、オレ
客観的に自分の行動を見つめていると、
競らずに、アクセルをゆるめて左側車線に移る自分がいた。
アッという間に追い抜いていくスポーツカー。
特に悔しいとも思わなかった自分。
ポンコツ車の窓を少し開けながら、ふと、こう思った。
「なるほど、オレの生き方ってこういうことなんだ」
誰かに負けたくない、というワケでもない。
金持ちになっていい暮らしをしたいワケでもない。
自分の好きな車で、好きなぺースで走れたら、
それでいいんだ。
膝元においてある「コアラのマーチ」をほおばりながら、
ハンドルを握る今の自分。
ええ歳した兄ちゃんがこんなにみすぼらしくったって、
幸せじゃないか。
そんな僕を見て、助手席で微笑んでくれる人がいたら、
それで人生幸せじゃないか。
自分の車だけは、
自分で追い抜けないんだよ。きっとね。