No.3169 娘の前髪を切りながら

息子の髪は、今でも僕が切っている。
娘の髪も昔は切っていたけれど、
今はもうしていない。

そんなに頻繁に切る必要がないからもあるけど、
やっぱり、
失敗したらイヤなので…。

「髪は女の命」とはよく言ったもので、
髪型次第で女の子の印象も随分と変わる。
だからこそ、今は娘の髪を切るのが怖くなった。

息子の髪なら、失敗したとしても
最悪丸坊主にすればいいけど、
女の子はそうはいかないからねぇ。

それでも、
前髪を揃える程度なら
今でもよくやっている。

天気の良い日、
髪が落ちてもいいように
庭先のベンチに娘を座らせて、ちょきちょき。

父が娘の髪を切る光景がイイ感じなのか、
たまに道行くおばあちゃんが
「お嬢ちゃん、パパに切ってもらってエエねぇ」と
褒めてくれる。

それを聞いた僕も、
「こうして切らせてくれるのも今だけなのかな…」と
少しセンチな気持ちになる。

子どもの前髪をすくのに、
本当はそれほど時間はいらないけど、
わざと時間をかけて、ちょきちょき。

風になびく風を何度も揃えながら、
ちょき、ちょき。

その間、娘は目をつむってじっとしている。
僕は、将来を想像しながら遠くを見ている。