No.4282 思春期の男友達

さっきまで、
近所の空き地で息子とボールを蹴っていた。

一人じゃ恥ずかしくて練習しないので、
体がなまらない程度に
軽く基礎練習とシュート練習だけを30分。
久しぶりにいい汗をかいた。

練習の途中、
野球のバットとグローブを持った
中学生の男子が二人、やってきた。

よく見ると、
昔よく空き地で一緒に遊んだ
息子の同級生だった。
 
 
 
 「おい、あれ、
  ケンスケとリョウジやろ?
   お前、しゃべらんのか?」
 
 
 
そう言うと、「え、あぁ」と
煮え切らない返事をする息子。
なんとなく察して、練習を続けた。

思春期の男子は色々難しい。
僕自身もその道を通ったからこそ
よく分かる。

小学校の時に遊んでいた友だちが
中学になっても一緒ということはごく稀で、
たいていはみんな、成長と共に友人も変わっていく。
息子も、今気が合う仲間は
ケンスケやリョウジじゃないのだろう。

小さな頃からみんなを見守ってきたオッサンとしては
少々寂しい気もするけど、仕方ない。
それが成長というものだから。

ただね、
思春期の男子がつれなくなっても、
それは本心ではないのだよ。

シンプルに言えば「照れ隠し」。
別に昔の友人が嫌いになったわけじゃないけど、
しばらく話していないと
なんとなく恥ずかしくて
何を話していいのかわからなくなるのだ。
自分の親父の前なら尚更だろう。

僕も中学の時は
野球部の新しい友だちとばかりいたから、
小学校時代の親友と遭遇すると
「お、おぅ…」とぎこちない感じだったよ。
懐かしいな。

この後息子と風呂に入るから、
そんな話でもしてやるか。

小学校時代の友人が、
ある日突然照れくさそうに
「久しぶりに野球しようぜ」と誘いに来てくれて、
めちゃくちゃ嬉しかったことも。

嬉しすぎて、こんな年齢になってもまだ、
昨日のことのように覚えていることを。