No.414 親父の味噌汁
ゴ-ルデンウィ-ク中、実家に帰った。
ついこの間帰ったばかりなのに、
やっぱりどこか懐かしかった。
毎晩深夜までツレと遊んで、
4時に寝て12時頃に起きる生活。
その日も昼頃目を覚まして、1階の食卓に行くと、
親父がテレビをつけたまま
新聞を読んでくつろいでいた。
「おぅ、起きたか。いつも遅いのぉ。」
「うん。」
10年前から少しも変わらない、
父と息子の不器用な会話。
テ-ブルの上にあった、
オカンが用意した昼飯のハンバ-グを食べ始める。
と、いきなり親父が立ち上がって、
“じゃがいも”の皮をむき始めた。
「味噌汁ぐらい食っていけ。」
親父は慣れない手で、
じゃがいもと玉ねぎをむいて味噌汁を作りだした。
コンロから漂ってくる、ほのかなガスの臭い。
ひたすら“おたま”で鍋の中をかきまぜる親父。
何も気づかぬふりをして、
わざと飯を食うスピ-ドを落とす僕。
「ほら、食っていけ。」
親父の自称十八番、
“じゃがいもの味噌汁”が完成した。
乱切りもはなはだしい、ゴツゴツのじゃがいも。
皮も沢山ついたまま…。
決してうまいとは言えなかったが、
僕はゆっくりとその味噌汁をたいらげた。
あたかも味噌汁が無かったら
ハンバ-グが食えなかったかのように、
交互に箸をつけながら。
時に、「幸せってなんだろう」と思うことがある。
それは意外と、カッコ悪くて、コテコテで、
とても不器用なものではないだろうか。