No.2882 大切な人なら
僕たちは、知らない。
君がスマホを替えたことも、
僕が靴を新しくしたことも。
近くにいても、見えていたものが
だんだん見えなくなってくる。
これを距離っていうのかな。
僕たちは、知らない。
都会に出た君が
どんな会社で働いているのかも、
地元に残った僕が
どんな家に住んでいるのかも。
距離が離れ、時間が経つに連れて、
ぼんやりとしか見えないことが
だんだん当たり前になっていく。
これを慣れっていうのかな。
僕たちは、知らない。
君が本当に生きているのかも、
僕が本当に死んでないのかも。
慣れが続き、
相手を想う回数が減るに連れて、
会えなくなる怖さすら忘れてしまう。
そして、二度と生きては会えなくなった
事実を知らされてから、
時が戻せぬことを思い出し、涙を流す。
これは何というのかな。
小さな距離が
いつしか大粒の涙に変わることなんて、
何度も何度も繰り返してきたはずなのに。
馬鹿だな。
大切な人なら、大切にしろよ。
そんな簡単に、離すなよ。