No.4396 息子とInstagram

昨夜、仕事を終えて帰る途中、
スマホを見たら息子からLINEが。
 
 
 「インスタ、お願いします!」
 
 
 「アプリ入れさせて!ホンマにお願いします!」
 
 
何度も続く、お願いメッセージ。。。

疲れていたから放置しようかと思ったけれど、
「まぁ、ある意味良い機会か」と、
帰宅するまで息子に考えさせるために返信した。

今後の保存用として、あえて文字で残るように。
 
 
 「一度しか言わんけど、
  今後のお前の人生にかかわる大切なことやから
  よく聞くように。
 
  相手にNoと言われる理由すらわかっていない奴は
  その時点で失格や。
  ひたすらお願いばかりしてダダをこね続けるのは、
  ただのガキってこと。
 
  『頭を下げる』のと『筋を通す』のとは違う。
 
  誰かに何かをしてほしいのなら、ちゃんと筋を通せ。
  そのための準備をしなさい。
 
  先に言っておくけど、
  自分の希望が実現しなかったとしても、
  それは相手のせいじゃない。
  筋を通せない自分の勉強不足、力不足や。
 
  相手に腹を立てるより先に、
  自分の情けなさに腹を立てなさい」
 
 
 
そう送った後、深くため息をついて
電車の座席に腰かけた。

たかだか中学生の男子が
一度ですべてを理解できるとは思っていなかった。

ただ、アホならアホなりに
一度考えてほしかった。
家に着くまでの間、目を閉じて少し休んだ。
 
 
帰宅後、遅めの晩飯を食ってから
リビングで息子と二人で話をした。
 
 
 
 「お父さんの言ってる意味はわかったか?」
 
 
 
   「うーん…、だいたい。
    でも、インスタやりたいねん!
    友だちもみんな始めてるし、
    仲間はずれになるのがイヤやねん!お願い!」
 
 
 
 「さっき送ったお父さんのメッセージには
  何て書いてた?」
 
 
 
   「え、お願いじゃアカンって…」
 
 
 
 「じゃあ、お前はまず何をせなアカンねん?」
 
 
 
   「えーっと…、筋を通すための準備」
 
 
 
 「そう、具体的にはどんな準備?」
 
 
 
   「う、うーん…」
 
 
 
息子には難しい質問なのはわかっていた。
でも、自分で答えを出させたかったので、
少しヒントを出しながら僕は続けた。
 
 
 
 「たとえば、
  お前が所属しているサッカーチームの監督が
  『入団させてください!お願いします!』
  とだけ言ってきた選手をチームに入れるか?」
 
 
 
   「入れへん」
 
 
 
 「そしたら、入団したい選手は何をせなアカンの?」
 
 
 
   「えーっと、
    監督が欲しいと思うプレーを
    目の前で見せなアカンと思う」
 
 
 
 「そうやろ?
  それすら理解していない奴は当然失格やな」
 
 
 
   「うん」
 
 
 
 「さっき送ったお父さんのメッセージに、
  Noと言われる理由すらわかっていない奴は失格、
  そう書いてあったよな?」
 
 
 
   「うん」
 
 
 
 「じゃあ、今お前はまず、何をせなアカンと思う?」
 
 
 
   「ダメな理由を理解せなあかん」
 
 
 
 「そうやな。何かをしたかったら、
  先に自分の気持ちを押しつけるんじゃなく、
  まずは相手の気持ちを理解しなきゃ始まらへんねん。
 
  じゃあ、次に
  お父さんがダメだと言う理由は何やと思う?」
 
 
 
   「SNSは危険が多いから?」
 
 
 
 「具体的には、どんな危険よ?」
 
 
 
   「知らない人が話しかけてきたり、
    犯罪にまきこまれたり…」
 
 
 
 「どんな犯罪? なぜ巻き込まれるの?」
 
 
 
   「…そこまではわからん」
 
 
 
 「なぜわからんと思う?」
 
 
 
   「…インスタのいいところばかり見て、
    怖さをちゃんと知らないから」
 
 
 
 「そう、勉強してないからや」
 
 
 
最初はワーワー言っていた息子も、
話を進めるにつれて何かに気づき始めたようで、
落ち着いて受け答えをするようになった。

その様子を見て少し手応えを感じたので、
僕はさらに続けることにした。
 
 
 
 「いいか?
  自分がやりたいことのために筋を通したいなら
  まず相手の気持ちに近づかなアカン。
  それが大前提や」
 
 
 
   「うん」
 
 
 
 「そして、相手の気持ちに正しく近づこうと思ったら、
  色々なことを知っておかなければいけない。
  そこで必要になるのは何やと思う?」
 
 
 
   「うーんっと、知識?」
 
 
 
 「そう。知識を増やすにはどうしたらいい?」
 
 
 
   「勉強をする」
 
 
 
 「そういうことや。
  学校にしろ塾にしろ、
  勉強することは目的じゃないねん。

  お前がこれからの人生でしたいことが見つかった時や
  欲しいものができた時、
  きちんと筋を通せる人間になるための手段として
  勉強が必要やねん。

  だから親というのは、
  子どもの幸せのためにお金まで払って
  勉強をさせてるんや。わかったか?」
 
 
 
   「はい」
 
 
 
 「今はお父さんもオッサンやけど、
  お前と同じように中学生の時もあったから、
  インスタにひかれる気持ちもよくわかる。
  だから、なんでもかんでもダメとは言わんよ。

  ただし、最低限、
  男として筋の通し方だけはそろそろ覚えろ」
 
 
 
   「わかった」
 
 
 
 「今夜の時点のお前では、
  まだまだ知識不足で認められない。
  それでもどうしても希望を叶えたいなら、
  デメリットも勉強してからもう一度相談に来い。
  話は何回でも聞いてやるから」
 
 
 
   「うん」
 
 
 
 「あと、『お願いします』と頭を下げるのは
  最初じゃない。一番最後や。
  筋を通して、相手も納得して、
  そこまでやって最後に頭を下げるものや。

  人間は一人では生きていけないから、
  お前が大人になってからも
  筋を通すことと頭を下げることは必要になる。
  よく覚えておくように」
 
 
 
   「はい、わかりました」
 
 
 
もう少しダダをこねる息子を叱るような
イメージをしていたけど、
案外、息子も話はできたようだった。

子どもに自由にスマホを使わせている
親御さんからすれば、
「たかがインスタアプリぐらいで大げさな~」と
笑える話かもしれない。

でも、大げさでも何でもいいから、
ちゃんと伝えたいものがあったんだよ。

何事も、やる以上は
中途半端にやってほしくはない。

もしも、今回のことで
息子がすべてを理解できたなら、今度は逆に
インスタの楽しみ方を丁寧に教えてやろうと思う。